1972年式であるW1SAにも参加資格があることから、調子に乗ってエントリーの決定した”Festival of Sideway Trophy”(以下FoST)、観客としては数年前から参加している大好きなイベントのひとつです。
モータースポーツの本場のひとつである英国では1950~60年代のシーンを再現した”Goodwood Revival”というイベントが行われています。その年代に活躍したヒストリックカー、グランプリレーサーはもちろんのこと、観戦に来るお客さんまでが当時のファッションに身を包み、会場全体で古き良きモーターカルチャーを楽しもう、というものです。
このFoSTは”Goodwood Revival”をリスペクトする想いの元で開催されています。モーターカルチャーやファッション、何より会場全体で楽しもうという運営目的が素晴らしいと思い、毎年足を運んでおりました。今回は初回ということで”Cafe Racer Tribute Run”という走行会枠での参加としましたが、それでもレースイベントへの参加という事で前日から気持ちが高ぶっておりました。
やはりレースの朝は早いもので、自分が走るとなれば尚の事です。
朝はT.R.Companyの方々とアクアライン海ほたるで5時に待ち合わせさせていただきました。トランポには名車がずらりと積まれ、早くも壮観です。
夜明けの海ほたるから小一時間ほど走って、会場の袖ヶ浦フォレストスピードウェイに到着しました。私は自走参加なので一人だけキャンプツーリングのような荷物…。これでも今日はサーキット走行をします。
受付を済ませた後で全体のブリーフィングに参加し、サーキット走行と本イベントの注意点を確認しました。こうしてエントラントの方々とご一緒すると、レースに参加している実感が一層湧いてまいりました。
ピットに戻ったら早速走行の準備を進めていきます。クラシックレースで知り合った方々も多くのレースに出ますので、観戦もしたいとなると早め早めの準備が肝要です。
と言ってもオイルフィラー、ドレンのワイヤリングは先日やっていただいたので、ミラーの取り外し、灯火類のテーピング、フロントのゼッケンプレートの取り付けを済ませれば完了です。フロントのゼッケンプレートはタイラップを駆使した無理矢理仕様なので、次回までにはかっこよく固定する方法を考えたいところです。
シートに積んであった大荷物はレースまでの間会場で過ごすための服と、走行用の革ツナギでした。革ツナギは調達にあたっていろいろな方のフォローを頂いたのですが、紆余曲折を経て”Cool Beans Classic Books”さんから拝借させていただきました。
もう一つ大切なのが「会場で過ごすための服」です。前述したように「観戦に来るお客さんまでが当時のファッションに身を包み、会場全体で古き良きモーターカルチャーを楽しもう」というGoodwood Revivalをリスペクトしていますから、走行時以外の服装にも気を遣う必要があります。普通に考えたら面倒なのですが、その面倒を楽しんでこその「文化」ということで、私自身は何を着ていこうかなと、いうのも楽しみなポイントであります。
準備が済んだのでパドックの名車めぐりに繰り出しました。
1969 Velocette Venom Thruxton
1937 Velocette MAC
1961 Honda CB77
1969 Rickman Velocette
1955 Velocette Venom
1963 Ducati Diana
1956 BSA DBD34
1939 BSA M24 Gold Star
1961 Triton
1938 Velocette KTT Mk-VII
1961 Triton Pre-unit
1947 Matchless G80
1955 Norton Manx 30M
1957 Ariel SQ4
早速慣熟走行が開始になりました。Velocetteの皆様行ってらっしゃい。
Porsche、Austinをはじめ、もちろん四輪も名車揃い。二輪は他のレースでお目にかかることも多いですが、これほどの台数の四輪がサーキット走行をするところを見る機会はないので、いつも通り感無量です。しかしそれぞれについてあれこれ伝える知識がないのが悔しいところです。
MCFAJの”Legend of Classic”でお手伝いさせていただいているDG親分はなんと今回Mini MarcosとNorton Manxのダブルエントリー。相変わらず尊敬すべきエネルギーです。光栄にも運転席に座らせていただきましたが、低い座面とハンドルとの距離感、フルバケットシートの座り心地に息が詰まりそうでした。二輪も怖いけど四輪も相応に怖そうですね…。
四輪の方々も予選が開始になりました。美しく可愛らしい車体と旧車独特の乾いた排気音が重なってとても2018年とは思えない光景でした。
今回は1歳になった息子も見学に来てくれました。大きなエキゾーストノートにびっくりしないかと幼児用イヤーマフを準備したのですが、最終的には装着せずに爆音のレーサーを楽しんでおりました。英才教育の成果がきちんと出ていることを確認できて一安心です。
そうこうしているうちに私の走る番が回ってきました。参加する”Cafe Racer’s Tribute Run”クラスには10台が走るようです。邪魔にならないように緊張しながらスタート…すると1周目はサイティングラップのようで、のんびり流し走行でした。
なるほど、走行会だし皆さんあんまり飛ばさないのかな?と思った2周目から一気に加速していきました。置いていかれないように目一杯走りましたが、なかなか思ったように曲がれません。W1SAは年式、排気量の面から有利であるはずが、着いていくのがやっとでした。
気がつくとチェッカーフラッグが振られており、終了となりました。あっという間の出来事に気が抜けたクールダウンの一周は、体の力が抜けた為か、今回一番思い通りにコーナリングができた周回となりました。
Photo by Hiroyuki Maeda – MODE BY ROCKERS
いろいろな方に走行写真を撮っていただきました!コーナリング時に体に力が入っているのが写真を見るだけで伝わってきます…。こうして見ると、加速時やコーナリング時のサスペンションの沈みもよくわかりますね。
走り終えて振り返ると、サーキットでの走行はとても得るものが多いと感じました。路面状態や安全状況の確認が行われているため、公道では削ることのできない安全マージンを最小限にして走ることができます。
その状況で走ればいつもより早い測度、急なブレーキング、思い切ったコーナリング姿勢を試すことができ、それによって得られる車両挙動の情報は公道を走るよりクリアに感じられるように思いました。
SEBRING 40m TROPHY
THROUGHBRED GRAND PRIX & GOLDEN ERA TROPHY
TINTOP CUP
表彰式の後は恒例の生沢徹氏による講評がありました。
今回は氏が経験した過去の写真を用いて、アマチュアモータースポーツカルチャーが如何に素晴らしく、どのように育んで行くべきか、という主旨のお話でした。例に挙げられたイタリアでのミッレミリアでは最終日の後に皆で正装をしてミーティングを楽しむそうです。純粋に素敵だし、かっこいいなと思いました。
このFoSTのようなカルチャーに重きを置いて楽しむモーターイベントは日本ではまだそれほど多くないはずです。サーキットを走るわけでもなければ、オートバイに乗るわけでもない、そんな一般の人達が公園に遊びに来るような、気軽で魅力的なイベントとして続いて行くことを願います。
走って楽しいサーキットは、老若男女みんなで楽しめる素敵な場所にもなれるはずです。モータースポーツカルチャーの隅っこに足を踏み入れてそんな事を考えた一日でした。